ブレーメンの音楽隊

昔・・・・歳をとったロバがいました。荷物を運ぶこともできないほど疲れきっていました。

ロバのご主人は言いました。

「もうおまえなんかには、えさをやることはできないぞ。」

ロバは、このままいると殺されるかもしれないと思い、家を飛び出しました。

「ブレーメンの町へ行こう。ブレーメンに行って、音楽隊に入ろう。音楽隊ならまだ働けるさ。」

 

ロバがしばらく行くと、くたびれた犬にあいました。

「どうしたんだい、犬君?」

「ごらんのとおり、歳をとったんで、もう猟ができないんだ。それで、主人に殺されそうになったんだ。」

「じゃあ僕と一緒に、ブレーメンに行こう。僕が太鼓を叩く、君がラッパを吹けばいい。」

 

しばらく行くと、猫がミーミー鳴いていました。

「どうしたんだい、猫さん?」

「ごらんのとおり、歳をとったんで、もう鼠が捕まえられないんです。それで、すてられることになったのよ。」

「じゃあ、僕たちと一緒にブレーメンに行こう。あんたのように歌がうまければ、音楽隊には入れるさ。」

しばらく行くと、鶏が鳴きわめいていました。

「どうしたんだい、鶏君?」

「こけっこ、けっけっけっ・・・・。鳴けるのは今日がかぎりなんだ。明日はスープにされちゃうのさ。けっけっこけっこー。」

「泣くのはやめな。みんなでブレーメンに行こうじゃないか。そんなすてきな歌ができるのに、死ぬことはないさ

 

四匹は、そろってでかけることになりました。ブレーメンの町に行って、音楽隊に入って、楽しくくらそうというのです。

ところが、ブレーメンは遠いので、一日では行けません。とちゅうの森で、一晩とまることになりました。鶏は木の上にとまって、寝ようとしました。

 

「や、や。向こうに明かりが見えるぞ。」

鶏が言いました。下にいたロバは、

「それじゃあ、人がすんでいるのだな。そこへ行ってみようや。」

犬も言いました。

「もしかすると、骨がもらえるかもしれないよ。」

四匹は、ぞろぞろと歩いていきました。

 

たしかに家がありました。

「何か見えるかね。」

鶏が聞くと、ロバが、

「見える、見える。テーブルの上には、ご馳走が山ほど。」

「それだけかい?」

「いやいや。宝物もいっぱいおいてある。これは、泥棒の家だ。ちがいない。」

 

「ああ、ご馳走が食べたい。もう、がまんができないよ。」

猫が言いました。

「何とかして、泥棒をおいはらうことができないかな?」

そこで、ロバの上に犬が乗っかって、犬の上に猫が乗っかって、猫の上に鶏が乗っかって、みんなで一度に、

「ぶるるるるるるー、ワンワン、ニャーニャー、コケコッコー!」

 

さけんでから、いきなり窓ガラスをわって家の中に飛び込みました。

びっくりしたのは泥棒です。

「ば、ばけものだ。逃げろ!」

四匹は、泥棒の残したご馳走に大喜び。

お腹のへっていた四匹の食べること食べること。

動けなくなるほど食べてしまうと、部屋の中のあちこちにごろんと寝転がって、眠ってしまいました。

 

泥棒の親分が言いました。

「おっ、家の明かりが消えたぞ。だれか様子を見てこい。」

「へい。」

と言って、子分の泥棒が家に入りました。

見ると、小さな火がぽちっと残っています。

泥棒は、その火で明かりをつけようとして近づきました。ところが・・・。

 

それは、猫の目だったのです。

猫はいきなり泥棒を爪で引っかきました。

それからあとはめちゃくちゃです。

犬が歯で噛み付き、鶏が嘴でつっつき、ロバが足で蹴飛ばして、泥棒をたたき出してしまいました。

「親分、やっぱりあいつはばけものだった!」

 

それからは、にどと泥棒はこの家に帰ってはきませんでした。

四匹は、この家がすっかり気に入ってしまいました。

「もう、ブレーメンの町なんて、行くのはよそうや。」

「この家で、楽しく暮らそう。」

「そうしよう、そうしよう。」